Smuggler’s Copter /密輸人の回転翼機 (2)
アーティファクト 機体
飛行
密輸人の回転翼機が攻撃かブロックに参加したとき、あなたはカードを1枚引いてもよい。そうしたならカードを1枚捨てる
搭乗1
3/3
■ヘリコプターゴブリン
●メインボード
4 《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey》
4 《ゴブリンの首謀者/Goblin Ringleader》
3 《騒乱の発端、グレンゾ/Grenzo,Havoc Raiser》
3 《ゴブリンの熟練煽動者/Goblin Rabblemaster》
3 《ゴブリンの酋長/Goblin Chieftain》
3 《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator》
2 《ゴブリンの戦長/Goblin Warchief》
2 《ゴブリンの女看守/Goblin Matron》
1 《ゴブリンの群衆追い/Goblin Piledriver》
1 《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal》
1 《群衆の親分、クレンコ/Krenko, Mob Boss》
1 《稲妻造り士/Lightning Crafter》
4 《霊気の薬瓶/AEther Vial》
3 《密輸人の回転翼機/Smuggler’s Copter》
2 《タール火/Tarfire》
4 《くすぶる劣塔/Smoldering Spires》
4 《魂の洞窟/Cavern of Souls》
3 《リシャーダの港/Rishadan Port》
3 《不毛の大地/Wasteland》
3 《沸騰する小湖/Scalding Tarn》
3 《Plateau》
2 《山/Mountain》
1 《Badlands》
●サイドボード
4 《虚空の杯/Chalice of the Void》
3 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
2 《真髄の針/Pithing Needle》
2 《罠の橋/Ensnaring Bridge》
2 《Pyrokinesis》
1 《タクタクの潰し屋/Tuktuk Scrapper》
1 《ヤスデ団/Earwig Squad》
「ヘリコプターゴブリン」という字面から漂うゴミっぽさといったら・・・
ゴブリン×乗り物といえば爆発オチしか想像できないのですが、一人回ししてみたらそこそこ遊べそうな感じはしたので思ったことを備忘録的に書いておきます。
■1、豊富なシナジー
● 密輸人の回転翼機 × ゴブリンの熟練煽動者
カラデシュで新たに登場した機体カードは一度に何人乗ってもよいルールです。
そのため熟練煽動者のせいで万歳アタックになってしまう時はゴブリンをヘリコプターに全て乗せれば(タップ状態にすれば)攻撃できなくなるので結果的に無駄死を回避できます。
しかもただ単に戦闘フェイズを飛ばすのではなく、空からリクルーティング付き3点パンチは入れているので対戦相手にダメージレースを強要することができます。
空から攻められている以上、相手としては地上のタルモなどをアタッカーに回さなければいけないのですが、こちらの場には熟練煽動者がいるので殴れば返しのターンで大ダメージを受けることは必至。
その結果相手のクリーチャーをブロッカーにもアタッカーにも回せない、という状況に追い込むことができます。
これはNic Fitの老練の探険者なんかには凄く効果的ですよね。
さらにこちらのゴブリン・トークンは毎ターン増えていくので、熟練煽動者かヘリコプターのどちらかを除去れない限りライフだけでなく盤面でも状況は悪化していくばかりです。
例えるなら『前門のヘリコプター・後門の熟練煽動者』といった感じでしょうか。
● 密輸人の回転翼機 × 騒乱の発端、グレンゾ
ヘリコプターは地べたを這いずり回るゴブリンと違って空を飛んでいるので、グレンゾのサボタージュ能力とは相性バツグンです。
1T目薬瓶。2T目ヘリコプター。3T目薬瓶からグレンゾ、ヘリコプターに搭乗してアタック、みたいな動きはグレンゾを絡めた展開の中でもはかなり強く、盤面の主導権を握るのに貢献してくれます。
この流れから4T目、薬瓶→熟練煽動者→アタック→誘発3回!みたいな展開になったら最高ですよね。
あと、細かいところだとハンドでダブついた2枚目以降のグレンゾをディスカードで処理できる点も◎
熟練煽動者とグレンゾはそれぞれ互いにシナジーしあっていましたが、ヘリコプターはそのどちらとも相互シナジーを形成するので、見た目以上に強く運用できそうな感じはしました。
グレンゾとゴブリン・トークンを寝かせてヘリコプターでアタック、使嗾誘発で返しのターンに熟練煽動者で大ダメージ、なんて動きはヘリコプターが登場したからこそできるようになったわけで美しさすら感じます。
■2、マナベースにかかる負担の軽減
熟練煽動者やグレンゾを最大限活用するには土地基盤をいじくって多少の無理をしなければいけませんでした。
具体的にはグレンゾを安定2T目運用するなら赤マナソースは多めに欲しいので不毛と港を減らさなけばいけませんでした。
また、熟練煽動者は場に出るのが1ターン早いか遅いかで強さに天と地ほどの差があるので古の墳墓は積極投入したいところ。
両者とも金属モックスと相性が良いのでディスアドですがここにも枚数は割きたたかったわけです。
しかし、どれだけグレンゾと熟練煽動者に焦点を当てようが、ゴブリンデッキは全体で見ればしょせんは中速デッキ。
赤マナソースを増やしたり墳墓やモックスを積極採用すると、グレンゾ・熟練煽動者を引けなかった(すぐ除去された)時にそのデメリットが無視できないレベルで重くのしかかります。
特にサイドから除去がたっぷり積まれるG2以降はこの傾向がより顕著に現れます。
そこで密輸人の回転翼機の出番です。
ヘリコプターがあれば熟練煽動者は高速で出さなくても万歳アタックしにくい場面が増えるので、墳墓で無理な加速をしなくても安定した運用が可能になります。
グレンゾは上で書いたようにハンドにヘリコプターがあれば2T目はそちらを優先して出すくらいなので赤マナソース多めの縛りからも解放されます。
この結果、不毛・港を従来と同じ枚数だけ取ることも可能になり、エルドラージ・sneakshow耐性の維持や中盤以降のマナフラでダレることが減りました。
■3、アタッカーとして非常に優秀
そもそも2マナ3/3飛行+リクルーティングというスペックがとても優秀だと感じました。
これはデルバー・セラアベ相当なので強いといえば強いのは当然ですが、ゴブリンはデッキ構造上、これをより強く運用できるようになっています。
グレンゾの考察ページ(http://aiueoaiueo.diarynote.jp/201608192109459548/)で「グレンゾは避雷針として優秀」と書きましたが、グレンゾや熟練煽動者が除去を引き付けてくれるお陰で、ヘリコプターが3点クロックとして仕事をする可能性が上がっています。
ヘリコプターは稲妻も剣鋤も衰微もどれも効くので初見ではとても脆いように思えます。
しかし、それら除去はヘリコプターより危険なゴブリンへ優先的に向けられるのでヘリコプターは後回しにされがちです。
その結果、コツコツクロックを刻んで気付いたら相手のライフは危険水準・・・なんていう今までとは別ベクトルからプレッシャーをかける事が出来るようになりました。
従来、ゴブリンデッキのクリーチャーはどれもシナジーありきだったので、盤面で一番強いゴブリンが除去されて壁クリーチャーを置かれると途端に殴れなくなる事態が多発していました。
具体的には酋長が除去られてこちらのクリーチャーは従僕・従僕・女看守。相手の場には死儀礼、みたいな。
ところが、ヘリコプターならそんな悩みもなんのその。
既存のゴブリン(地上・小粒・横のシナジー前提)とは全く別軸の攻め方(空中・中粒・単体運用前提)をするので除去でどれだけゴブリンシナジーをズタズタにされようが搭乗用のゴブリン1匹さえ残っていれば確実に仕事をこなしてくれます。
それでいてグレンゾや熟練煽動者が生き残っていればそれらとシナジーを形成するのだから、強いわけです。
・除去されない(他に除去すべきクリーチャーが多いので)
・ブロックされない(飛行のおかげで)
上記二点から、ゴブリンにおけるヘリコプターはある意味真の名の宿敵である、といってもいいかもしれません。
いや、最速ネメシスより2ターンも早く殴り始めることやリクルーティング能力があることを加味すると、もしかしたらネメシス以上かもしれませんね。
■4、不要牌をディスカードできる。(9月27日追記)
リクルーティング能力が不要牌をディスカードできるなんて“雨が降ると天気が悪い”並に当たり前すぎて最初は取り上げるまでもないと思っていました。
しかし、いざ実際に一人回しをしてみるとゴブリンについてはこれが滅茶苦茶重要ではないかと思うようになりました。
なぜならゴブリンはタール火・棘鞭使い・ゴブリンの名手・タクタクの潰し屋といった相手によってはモンス以下のカードをメインボードに積まざるをえず、ひとたびそれがハンドに来てしまったらプレイする以外に処理方法が無いからです。
青いデッキのように渦まく知識で戻したりWillの弾にすることはできませんし、BG系デッキのようにリリアナで捨てることも出来ません。
“相手によっては腐るカードをメインに入れていて、それがハンドに来てしまったときの処理方法がないデッキ”はゴブリンに限らず、他にもDeath and Tax(剣を鋤)をはじめとして色々あります。
ですが、そういうデッキは元々アグロ的なデッキが多く、脇を固める他のカードも強いので有利な盤面になれば速やかにゲームを終わらせることが可能です。それ故ゲームが間延びして不要牌を複数枚引く機会も少なく、問題が顕在化しづらいという側面がありました。
これに対してゴブリンはコントロール的に振る舞うマッチアップが多いにも関わらず、ひとたびハンドに吸い付いてしまった不要牌の処理方法がプレイする以外に無い、という厄介なデッキです。
ただでさえ1枚1枚のカードパワーが低いゴブリンはシナジー全体で勝たなければならないデッキなので、そこに与しないカードは本当にいらない子なわけです。
これは極端な例ですが、対Miracleで終末の返しに切り札の首謀者で【タール火・棘鞭使い・ゴブリンの名手・タクタクの潰し屋】とめくれたら多分そのゲームは落とします。
そうでなくても【薬瓶、従僕、棘鞭使い、首謀者、タクタク、土地、土地】のような初手をキープして相手が1T目にTundra→独楽と動いてきたらダブマリしているようなものです。
したがってこれら無駄牌を有効牌に変換できる密輸人の回転翼機のリクルーティング能力は本当にありがたく感じます。
■5、戦闘時の除去の後出しに強い(9月27日追記)
密輸人の回転翼機はアタック・ブロックした時点でリクルーティングが誘発するので相手としては除去はなるべく戦闘フェイズ前に打ちたいもの。
しかし戦闘前に除去が打たれればこちらのアタックに除去を合わせてシャクられる可能性が減るので、群衆追いなどをアタックに回すかどうか後出しで選ぶことができます。
ゴブリンユーザーなら全軍アタックした所に群衆追いに除去を打たれて小粒をタルモでブロックされてアド損した・・・という体験は何度も経験したことがあるはずですが、それを未然に防ぐことが可能になります。
除去を握っていそうな相手が密輸人の回転翼機に除去を打ってフルタップしたらこちらもオールインすればいいし、密輸人の回転翼機をクリーチャー化したのに除去をそれに打たないようであれば密輸人の回転翼機だけで殴ればいいわけです。
今まで悩みの種だった群衆追いに関するやり取りに密輸人の回転翼機が加われば不利が解消されるというわけです。
■6、密輸人の回転翼機の弱点(9月27日追記)
密輸人の回転翼機は上で挙げたようにゴブリンの熟練煽動者や騒乱の発端、グレンゾと相性が良いので現代ゴブリンにおけるマスターピースのようにすら感じられます。
しかし、そんな密輸人の回転翼機にももちろん弱点はあります。
それはデッキ内における非ゴブリンスペルの枠を取ってしまう、という点です。
現在のレガシーにおけるゴブリンデッキはサイドボード15枚で勝つことは難しく、18枚ないし17枚はサイド枠がなければTier1とやりあうことは不可能です。
そこで、多くのゴブリンユーザーは通常であればサイドが定位置のカードをメインボードに昇格させてこの問題の解決を試みています。
具体的には虚空の杯やPyrokinesisなどがこれにあたります。(※他にも細かいところだと大祖師の遺産とか歪める嘆きとか色々ありますが、挙げだしたらキリがないので省略します)
Pyrokinesisはハイスペッククリーチャーが跋扈する現代レガシーにおいて後手後手に回りやすいゴブリンデッキのテンポを補うと共に、従僕や群衆追い、グレンゾのための道を開けるという二点でゴブリンにマッチしています。
虚空の杯は代々弱かったゴブリンデッキの2マナ枠を埋めて初手のキープ率を上げると共に、低マナ圏に寄せたデッキばかりのレガシーでは刺さる相手の多さからメインに昇格した1枚です。
この二つはどちらもゴブリンに非常にマッチしており、ゴブリンカウントを減らしてまでもメインボードに入れる価値のある非ゴブリンスペルとして重宝されてきました。
ところが、密輸人の回転翼機にはこの2枚が担っていた役割を果たすことはできません。
Pyrokinesisであれば2T目の石鍛冶や難題に(アド損とはいえ)対処はできていますが、密輸人の回転翼機ではこうはいきません。
虚空の杯であればミラクルやテンポデッキ相手に高確率でカウンターを引き出せますし、対コンボは言わずもがな、です。
しかし密輸人の回転翼機ではこうはいきません。
密輸人の回転翼機はあくまでゴブリンの元々の性質を後押しして伸ばすだけのカードであって、出来なかったことをできるようにするPyrokinesisや虚空の杯とはそもそも性質が異なります。
そのため密輸人の回転翼機を入れるとゴブリンカウントの都合からPyrokinesisや虚空の杯はサイドに落とさざるを得ず、サイドは15枚で勝負しなければならくなります。
もちろん、密輸人の回転翼機を入れることでゴブリンのデッキパワーが上がってそれによって今まで落としていたゲームを拾えるようになる可能性もありますが、これは対フェアデッキに限った話。
対コンボ戦でのラッキーWinは無くなりますし、きっちり拾わなければならない対Miracle戦も虚空の杯をメインに入れている構成と比べればうっかり落とす確率も上がるはずです。
そういう意味で密輸人の回転翼機も手放しで褒められるカードというわけではなさそうです。
■7、おわりに
最初にこのエントリーをUPしたのが12日(月)。そこから一人回しを経て思ったことを追記したらかなり長くなりました。
グレンゾの興奮も冷めやらぬところ、間を置かずゴブリンデッキ遊べそうなオモチャが登場して嬉しい限りです。
密輸人の回転翼機はスタン目線でも相当やりおるようで、発売前の時点でグイグイ値段が上がっているそうなのでやっぱり強いんでしょうね。
そろそろブログタイトルを『レガシーのゴブリンに関する日記』から『レガシーのゴブリンに関する妄言を書く日記』に変更した方がいいかもしれませんね
●9月13日(火)追記
Smuggler’s Copterの日本語訳は『密輸業者のヘリコプター』ではなく『密輸人の回転翼機』だったので訂正しました。
回転翼機・・・回転翼機かぁ・・・
コメント
新グレンゾが出た際、熟練煽動者のバンザイアタックが嫌で切りましたがこのシナジーがあるなら本当に面白い。ゴブリンも(ヘリで)空を飛ぶ時代が来ましたか。
記事内容はたいへん興味深いものでした。
是非試してみたいと思います。
グレンゾ+ラブルで新たな形のゴブリンが模索される中、その両者と相性の良いカードが登場するとなると何か運命めいたものを感じずにはいられませんね。